発刊に寄せて
『公共経営研究e』 発刊に寄せて
早稲田大学大隈記念大学院公共経営研究科
研究科長 江上 能義
ここ2-3年の構想であった本研究科のe紀要、公共経営研究e発刊が実現される運びとなり、研究科長として大変嬉しく存じます。本紀要が、公共経営研究を志す研究者・実務家にとって業績発表の重要な機会となり、公共経営を巡る様々な論議を喚起・発展させることへの一助となるよう、衷心から念じて居ります。
この機会に、本紀要への寄稿を目指す若手研究者・実務家に対して、論文執筆に関わる管見を披瀝し、今後の参考にして頂きたいと存じます。一般に、論文の新規性には、少なくとも3つの側面があると言われています。その第一は先行研究整理視座の新規性、その第二は情報提供の新規性、そして最後はアプローチの新規性です。まず、自分が関心を寄せる問題領域に関して、先達が如何なる研究業績を残してきたのか、これを如何なる視点から整理し、新たな研究展開の契機がどこに存在するのか、これを明確に示し得ることが、論文執筆の第一歩であると同時に、論文完成時の重要な評価観点となります。
次は、この基盤に立って、これまで示されてこなかった新規な情報をどの程度、どのような形で提供しうるのか、また当該情報をどのような方法で取得できたのか、という観点です。特にインターネットが発展した今日では、情報一般へのアクセスが誰にとってもかつてに比べて遥に容易になったため、この新規性を如何にして示し得るかが、論文展開の鍵となります。そして、どのような観点に新たな問題点を見出し、その問題点をどのような論理と研究方法で解明しようとするのか、このアプローチの独自性が、恐らく最も重要な観点でしょう。特に私個人としては、問題発見能力を重視したいと思っています。
これら3点が全て新規であるに越したことはありませんが、それを備えた論文とは、それ程頻繁に完成させ得るものではありません。しかし、常にこれら全てを意識した論文執筆を目指し、その一つでも二つでも具備した仕事を完成させることの積み重ねが、研究の発展に繋がると確信しています。
そして最後に、公共経営研究を標榜する本研究科として、上記3点に加えて強調しておきたいことは、研究成果が、現実との接点と現実改善への有意性を持つことです。特定の政策分野や社会全般に関して、改善に向けた提言を有する研究成果が挙がることこそ、本研究科における教育と研究の目的です。こうした現実有意性をも備えた論文が、本紀要を中心として旺盛に執筆され、公共経営研究の水準が少しでも向上されることを、心から期待して止みません。
