ニューズレター 第4号
ミラノ、デューク、安倍フェロー
茨城大学人文学部助教授
井戸 正伸
1999年4月から2000年3月の1年間にわたり、安倍フェローのご支援をいただき、「グローバリゼーション時代の労働市場政策:イタリア、アメリカ合衆国、日本」をテーマとしてミラノ大学とデューク大学でそれぞれ客員研究員として海外研修をしてまいりました。ここでは、安倍フェローの簡単な紹介と私の一年間の海外生活を報告したいと思います。
安倍フェローは、日本経済の対米進出が騒がれた時期、アメリカ国内における「ジャパン・バッシング」を懸念した日本政府が、アメリカの日本研究者のさらなる支援と、日本の対米理解のさらなる深化が必要だと考え、国会決議を行い、創設されました。現在では、日米あわせて12名程度のフェローが毎年、選ばれています。
安倍フェローの優れた点として、アメリカを研究プロジェクトに含めさえすれば、他の国の研究もできる点(私の場合、イタリア)、そして、そのプロフェッショナルな運営がまず挙げられると思います。運営は、米国社会科学研究評議会、米国学術団体評議会、そして日本の日米センターが共同で担当しています。アメリカで長い間、社会科学の研究支援を行ってきた社会科学研究評議会による運営は、よく考え抜かれた効率的なものです。申請するためには、まずプロポーザルが英文10枚程度必要で、研究内容をかなり練っていないと実際には書けません(私は、早稲田の図書館でひと夏かけて書きました)。
次に一年間の海外生活についてですが、最初のミラノ大学では1999年4月から同年9月までマリノ・レジーニ教授のもとで研究しました。イタリア人というと、日本ではとかく生活をエンジョイしているビューティフルな人々、悪くいえばちょっとルーズななまけものという見方が一般的であるかと思います。しかしながら、今回、このような見方がいかに誤っているか痛感しました。レジーニ教授のオフィスのすぐ前のオフィスを与えられたのが、不幸(?)の始まりです。レジーニ教授は、毎日、8時半ごろにはオフィスに入り、授業を除き一日中研究をしているのです。そして、私に研究はどこまで進んだか、定期的に質問するのです。ミラノを中心に半年間、イタリア国内を旅行し、イタリア生活をエンジョイしようという私の夢ははやくも潰えました!
このようなミラノでの半年の研究生活を終えて、本当に消耗してしまいました。次のアメリカのデューク大学では、UCLA、ハーヴァード、バークレー、シカゴなどの各大学の研究者を訪ねて、インタヴューを行いました。(あらためてアメリカは大きな国だと思いました。)そして2000年1月には、参加が義務付けられている2泊3日の研究合宿の”Fellows’ Retreat”がやってきました。 ”Fellows’ Retreat” では、研究の中間報告を6人ぐらいのセッション形式で行い、たがいにコメントしあいます。これ以外にも、「インターネット時代における日本経済の将来」をめぐるディベートとか、フェロー同士の一対一の討論(私は九州大学の豊永さんと組みました)とか、もう盛り沢山の内容です。安倍フェローの一年間の感想は、プログラムが計画的に組まれており、研究テーマのリサーチを行うためにミッチリ働かされた、というものです。あっという間に一年が過ぎ、帰ってきたら、大学では2年間分の授業が待っていました。どうにか、2000年のアメリカ政治学会ワシントンDC大会で、安倍フェローの成果を報告しましたが、さらに研究の時間を見つけて論文を完成させ、どこかに投稿しなければと思っています。
最後になりますが、もし皆さんが、将来、安倍フェローとなられる場合には、1年間ではなく2年間の研究期間を申請されることを、強くお勧めします。
2001年度早稲田政治学会研究会 共通部会 国際シンポジウム
早稲田大学政治経済学部教授
谷藤 悦史
政治充足の低下、政治不信の拡大、政治的シニシズムの台頭、政治参加の衰退などが、先進民主主義諸国の共通の現象になっている。こうした状況に対応して、民主主義のパフォーマンスに関わる研究が、「民主主義の赤字」ないし「民主主義の欠損」研究として広く行われることになっている。「異なるレベルの民主主義における政治参加の国際比較研究」は、同じ流れの中で、地方選挙、国政選挙、ヨーロッパ議会選挙という異なるレベルの選挙に焦点をあて、投票率の低下ならびに棄権の原因を社会調査データの収集と分析によって、時系列的、交差比較的に明らかにすることを目的として発足した。
1999年に発足した研究組織は、内田満(早稲田大学名誉教授)、谷藤悦史(早稲田大学教授)、田中愛冶(早稲田大学教授)、J. F. P.ブロンデル(ヨーロッパ大学院教授)、R. シノット(ダブリン大学教授)、P. スベンソン(アーハス大学助教授)から構成され、今日までに、日本の地方選挙ならびに国政選挙の調査データの収集と解析、ヨーロッパ議会選挙の調査解析が進められてきた。これまでに、研究成果の一部がブロンデル達の手によって『EUの人々と議会:民主主義、参加、正当性』(オックスフォード大学出版部)として纏められている。今回の国際シンポジウムでは、研究メンバーの2年間の調査研究を基に、日本とヨーロッパにおける政治参加と棄権の特性について集中的に議論される。早稲田政治学会会員諸氏の参加を期待している。
尚、本研究は早稲田大学の特定課題研究(国際共同研究)の助成を受けて進められ、国際シンポジウムの開催については、早稲田大学国際会議等開催助成を受けた。