研究科長挨拶
経済学研究科長
須賀 晃一
現代社会では、人々の間の相互依存関係だけでなく、地域間、国家間の相互依存関係が深まっており、そのために個人や地域、国家が単独で我々を取り巻く社会・経済の問題を解決することが不可能になっているといえるでしょう。このような相互依存関係はグローバリゼーションとイノベーションによって深められたといえますが、それらが世界の仕組みをがらりと変えてしまいました。市場経済が世界中に広まり、それに対応して政治・社会・文化・技術など様々な次元で世界の国・地域・国民が相互依存を強めてきました。その裏側には、IT技術の進歩による多方面でのイノベーションがあります。それによって、独立の国民国家という単位を超えた広範囲の相互依存関係が世界に生じ、1つの国だけで問題の解決に当たることが不可能になったのです。さらに、自然の脅威も忘れることはできません。いくら科学技術が進歩しても制御できない自然に対し我々はただそれを畏敬の念を持って受け入れることしかできませんが、地球環境問題をはじめとして文明の進歩とともに強まった自然の脅威もあることを忘れてはなりません。
我が研究科も学問の進歩・発展に呼応して研究を深め教育環境を整えるべく鋭意努力してきました。研究面では、それぞれの専門分野における先端的研究に加え、21世紀COEに引き続き2008年度より本研究科を中心拠点とするグローバルCOEプロジェクトが文部科学省により採択され、政治学研究科との連携のもとに世界に先駆けて「制度構築の政治経済学」という新たな学際領域を切り拓く活動を内外の大いなる期待の下に推進しています。教育面では、国内外の多くの研究科と積極的に交流を展開しています。国内的には慶應義塾大学大学院経済学研究科および東京工業大学大学院社会理工学研究科との単位互換、国際的には中国人民大学との相互派遣教員による集中講義や香港城市大学との連携による共同学生指導などがその一例です。さらに博士後期課程の学生のためにも、合同研究指導、紀要の整備、学会報告のための奨励金など様々なサービスの提供を行っています。その甲斐あって、ここ数年で経済学博士の学位を取得する学生の数は飛躍的に増加しています。
一方、時代の変化に呼応して多様な学生を国内外から多数迎え入れるための努力も進められています。2009年度より入学試験様式が大幅に拡張され入学のために多様なルートが用意されると同時に、9月入学・9月卒業が制度化されて外国人のための入試が簡素化されました。それに伴い英語による一貫した指導が可能になり英語だけで修士号・博士号を取得することができるようになりました。我々は今後日本だけでなく世界に開かれた大学院として一層の充実を図ることが使命の一つであると考えています。また、高度専門職業人の養成も今日的課題です。本研究科においても修士課程を卒業して就職する学生が増えてきました。多様なニーズに対応してどのようなプログラムやカリキュラムを提供できるか、検討を続けています。政治学研究科との共同事業として出発した国際政治経済学コースも一層の充実を図るべく新たなプログラムが検討されています。様々な方向への教育の高度化が図られなければならない時代にあって、我々は多様なニーズへの適切な対応と教育機会の提供もまた、重要な課題として位置づけています。
専門化が進み高度化した学問を学ぶことは決して楽な作業ではありませんし、学際的な学問に参入することは更なる困難を伴うでしょう。しかし、その知的冒険はまた極めてエキサイティングなものであり、それ相応の有形無形のリワードもあります。知識と判断力で勝負することが強いられる現代社会において、多くの人々が明確な問題意識と目標を持って果敢に大学院へチャレンジしてくれることを心より期待します。
